中野市の100円均一不動産!?

5月18日付の信濃毎日新聞で、中野市独自のユニークな空き家対策の記事がありました。何と、ボロ空き家(=俗にいう「負動産」)をワンコイン100円で売り出し、売主と都市部の買主をマッチングさせるそうです。不動産業者には、完全な赤字となるので敬遠されますが、市役所の担当者が仲介営業マンになれば可能ということです。移住者が増えれば、消費が増える分だけ地域の金回りが良くなり、住民税も増えますからね。(だからこそ、行政主導の空き家対策は有意義という訳です。)

*************以下、信毎の記事です*************

半壊の家を100円販売 “負“動産? 宝物になる可能性秘めた「チャレンジング物件」?〈空き家20万戸時代〉

■〈空き家20万戸時代・第1部 対策ー知恵を絞って〉①

 空き家の増加が止まらない。長野県内の空き家は20万戸に迫り、空き家率は19・6%と都道府県別でワースト3に入る。各自治体が対策に動きだしている一方、空き家の片付けや処分は相続者にとっても切実な悩みだ。荒廃する空き家を減らすための対策、住まいの“終活”、空き家活用による街おこしなどの動きを連載で伝える。第1部は、100円で買い手を募る“100均物件”の取り組みなど、空き家対策の現場から。(吉尾杏子)

■「100円均一」 売り手と買い手のマッチング事業をスタートした中野市

 「こちらが(100均の)物件。建物は半壊状態ですが、温泉もキャンプ場も近く、山菜の宝庫ですよ」

 4月中旬、中野市の斑尾高原の別荘地にある山林で開かれた中古物件の見学会。案内役の市都市計画課職員大原弦太さん(31)に導かれ、会社経営の井上聡さん(38)=埼玉県川口市=が、まだ解けない雪の上を踏みしめていく。シラカバやブナの木立の間に姿を現したのは、100円の売値がついた物件だ。

 民間所有の空き家を、自治体の職員が案内するのには、訳がある。中野市は2021年、なかなか買い手のつかない物件を“100均物件”としてPRし、売り手と買い手のマッチングを後押しする取り組みをスタートした。大原さんが案内する斑尾の物件もその一つだ。

 築49年。大雪で屋根や階段は朽ちて落ち、割れたガラス窓からは家具が散乱する内部が見えるなど、空き家というより廃虚に近い。

 所有者は東京在住の女性(79)。「娘たちが幼い頃、よく家族や親戚で遊びに来た」思い出はあるが、子どもが自立してからは足が遠のくように。1996年に親から相続して以降、20年以上一度も訪れていないという。

 電気や水道は現在使えず再開には調査が必要。敷地の広さは951平方メートルだが土地の境界が不明確で、道に接しておらず、別所有者の土地を通って入る必要があるなど、いわゆる「難あり物件」だ。

■「チャレンジング物件」に問い合わせ複数

 ところが、この物件の購入を検討している人が複数いるという。この日見学した井上さんは、小学生ら3人の子の父親。「広い場所で思い切り遊ばせたい」とアウトドア向きの土地を探し中といい「子どもたちと一緒にキャンプしながら、家をセルフビルドするのもいいな。夢が広がりますね」と気に入った様子だ。

 井上さんがこの物件情報を知ったのは、空き家情報のウェブサイト「“ちょうどいい”信州なかの田舎暮らし作戦!」。昨年4月、中野市が民間の会社と提携して開設した。今回の別荘地の紹介欄にはこんな文字が躍る。“目の前は獣道!100円チャレンジング物件”―。

 これまで登録された物件は2件で、うち1件は成約済み。建物の劣化具合などから、空き家バンクで登録できなかったり、仲介手数料が十分に見込めず不動産業者に「とても売れない」と、さじを投げられたりした物件だ。

 しかし、“100均”サイトに掲示後、自然環境や値段のインパクトに引かれ、首都圏を中心に移住希望者らの問い合わせが相次ぐという。

 大原さんはこう話す。「誰かにとっては“負”動産も、誰かにとって宝物になる可能性を秘めている。需要を掘り起こし、マイナスをプラスに転じる策があれば」

          ◇

■長野県内の空き家率 全国3番目の高さ

 県情報政策課によると、県内の空き家数は2018年10月時点で、過去最高の19万7300戸と、13年の前回調査(19万4千戸)に比べ1・7%増えた。住宅総数も増えたため、空き家率(19・6%)は前回から0・2ポイント低下したが、いまだ高い状況が続いている。

 県内の空き家率が高いのは、普段は人が住んでいない別荘が多いことが原因の一つ。別荘などの「二次的住宅」を除いた空き家率は、前回比0・3ポイント増の14・8%で、都道府県別だと高い方から19番目。

 県内の住宅総数は前回から2・6%増え100万7900戸。昭和43(1968)年以来、住宅数の増加は世帯数の増加を上回っており、18年、1世帯あたりの住宅数は1・24戸ある。

 総務省の18年住宅・土地統計調査によると、都道府県別の空き家率は、高い順に山梨、和歌山と続き、長野は3番目。全国的に空き家は増え続けており空き家率は過去最高の13・6%。総数は約849万戸。過去20年で約1・5倍に急増し、対策が急務だ。

  ■  ■  ■  ■

 空き家の片付けや相続、処分について、悩みはありませんか? ご意見や記事への感想をお寄せください。氏名、連絡先を明記の上、郵送(〒380―8546 長野市南県町657 信毎文化部「空き家20万戸時代」係)か、ファクス026・236・3194、メール:kurashi@shinmai.co.jpまで。

〈次回は23日に配信予定〉